原稿を投稿する前に確認すべき領域は6つあります。図と画像、統計、参考文献、該当する報告ガイドラインに照らした研究方法の記載の網羅性、AI利用を含む倫理・開示に関する記載、そして投稿先の学術誌と助成機関に固有の規定です。デスクリジェクトや信頼性に関する問い合わせの大半は、これらのいずれかの領域に起因しており、どの領域も投稿前に確認できます。
図と画像に問題はないか?
図と画像は編集部のスクリーニングで厳しく精査されるため、チェックリストはここから始めましょう。画像の信頼性を専門とするアナリストのJana Christopher氏は、UKRIOの専門家インタビューで、出版前に自身がスクリーニングした採択済み原稿の20〜35%が画像関連の問題で指摘を受けたと述べています。また、よく耳にする説明の一つとして、著者が図の作成中に仮のパネルを使い、投稿前に差し替えるのを忘れていたケースを挙げています。だからこそ、ご自身の図を確認することには大きな意味があります。図の作成中に生じた誤りは、他の誰かの目に触れる前に取り除けるからです。
- 各画像の使用は1回のみ。図のセット内に重複したパネルや重なり合うパネルがなく、ご自身の過去の論文の画像を、引用と許可なしに再利用していません。
- 調整は均一で、開示済み。明るさ、コントラスト、色の変更は画像全体に適用され、学術誌が求める場合にはその旨が記載されています。
- 合成画像の明示。切り貼りしたゲルのレーンや組み合わせたパネルは、境界が明確に示され、図の説明文で説明されています。
- 元画像の保管。トリミングや調整をしていない元画像が保存され、求めに応じてすぐに提供できます。
- 説明文と実際の内容の一致。各図の説明文が、倍率、染色、反復数を含め、図に実際に示されている内容を記述しています。
画像と図の問題は、スクリーニングすべき長いリストのうちの一つの観点にすぎません。残りの項目を把握するには、信頼性チェック全体の対象範囲が役立ちます。
統計に矛盾はないか?
統計は、悪意のない誤りが集中しやすい部分です。数値は解析結果、本文、表、図の間で手作業で転記されるからです。転記のたびにずれが生じる可能性があり、査読者はそのずれに気づきます。
- 研究デザインに合った検定。報告された統計的検定が、データの種類、サンプルの構造、記載された仮説に合致しています。
- 数値の内部整合性。検定統計量、自由度、p値が互いに一致し、閾値だけを示すのではなく正確な値が報告されています。
- すべての箇所でサンプルサイズが一致。抄録のnが、研究方法、表、図の説明文のnと同じで、脱落がある場合はその理由が説明されています。
- 割合の合計の一致。サブグループの件数と割合の合計が、記載された総数と一致しています。
- ばらつきの定義。エラーバーや散布度の指標が、SD、SEM、信頼区間のいずれであるか一貫して明記されています。
ここで厳密さが求められる理由は再現性です。Nature誌が公表した調査では、回答した1,576人の研究者のうち70%以上が、他の研究者の実験を再現しようとして失敗した経験があり、半数以上が自身の実験の再現にも失敗した経験があると答えました。自らの表から数値を再計算できない原稿は、そうした失敗を招きます。統計の整合性は、再現性のうち、投稿前にご自身で完全にコントロールできる部分です。
参考文献はすべて実在し、正確で、撤回されていないか?
参考文献リストの不備には、3つの異なる形があります。引用した論文が引用後に撤回される場合、主張と出典の結びつきを損なう誤りが含まれている場合、そして文献がそもそも存在しない場合です。3つとも投稿前に確認できます。
- すべてのDOIが有効。しかも、著者、発行年、タイトルが一致する、引用しようとした文献そのものにたどり着きます。
- 撤回論文が残っていない。撤回は通常、引用された後に起こります。そのため、執筆時には問題がなかった参考文献リストも、投稿時には古くなっていることがあります。投稿の直前にもう一度確認しましょう。
- 各引用による主張の裏付け。引用した文献が、本文でその文献に結びつけた内容を実際に述べています。出典を読まずに他の論文の参考文献リストから引用を写すと、その論文の誤りがご自身の論文にも引き継がれます。
- AIの支援を受けた原稿は1件ずつ検証。Scientific Reports誌に掲載された査読付きの検証では、GPT-3.5が生成した文献引用の過半数が架空のもので、GPT-4でも架空または誤った引用がかなりの割合を占めました。実在する文献への引用でさえ、内容に関わる誤りが頻繁に含まれていました。
架空の参考文献がもっともらしく見えるのは、ありそうな著者名、実在する学術誌名、妥当なページ番号を組み合わせて作られているからです。見た目だけでは、その文献が実在するかどうかはわかりません。確認する方法は、実際の記録と照合することです。
研究方法は再現できるほど十分に記載されているか?
研究方法の記載が網羅的かどうかで、将来のご自身も含め、誰かがその研究を再実施できるかが決まります。報告ガイドラインは、網羅性を当て推量で判断しなくて済むようにするためにあります。EQUATOR Networkは健康研究の報告ガイドラインを網羅した検索可能なライブラリを運営しており、現在では多くの学術誌が投稿時に該当するチェックリストの提出を求めています。一般的な4つの研究タイプとそのガイドラインは次のとおりです。
| 研究タイプ | 報告ガイドライン |
|---|---|
| ランダム化比較試験 | CONSORT |
| システマティックレビューまたはメタアナリシス | PRISMA |
| 観察研究 | STROBE |
| 動物実験 | ARRIVE |
ガイドラインのチェックリスト以外の項目は次のとおりです。
- 公開状況の記載が正確。データとコードの公開に関する記載があり、記載されたリポジトリに、示されたとおりの内容が実際に含まれています。
- 材料の正確な特定。試薬、抗体、細胞株、系統、機器が、他の人が同じものを入手できる程度に詳しく記載されています。
- 解析の手順をすべて記載。ソフトウェアのバージョン、パラメーターの選択、除外基準、登録済みプロトコルからの逸脱があればその内容が記載されています。
研究デザインに合ったガイドラインは、「方法」のセクションを書いた後ではなく、書く前に見つけておきましょう。書き上げた文章に後からチェックリストを当てはめようとすると、不整合が入り込みます。
開示事項と倫理に関する記載はそろっているか?
開示事項や倫理に関する記載は、研究内容よりも先に読まれます。ここに不備があると、他の点では準備が整っている原稿でも処理が遅れます。
- 倫理審査の承認を記載。承認番号も併記され、同意に関する記載は、参加者が実際に同意した内容と一致しています。
- 登録情報の記載。臨床試験とプロトコルの登録が、その識別番号とともに記載されています。
- 利益相反(COI)と資金提供の情報を全著者分記載。助成機関が求める場合は、助成番号も記載されています。
- 著者の貢献を記載。著者として名前が挙がっている全員が、著者の要件を満たしています。
- AI利用の開示。ICMJE勧告は、投稿する研究成果の作成に使用したAI支援技術を開示するよう著者に求めています。対象は執筆だけでなく、データ収集、解析、図の作成にも及びます。
オーサーシップに関するICMJEの立場も同様に明確です。著者であることは研究全体に対する責任を伴い、ツールは責任を負えないため、チャットボットを著者として記載することはできません(ICMJE勧告)。開示は、何らかの非を認めることではありません。日常的な編集上の質問を研究公正上の問題に変えてしまうのは、後から発覚した未開示の利用です。何を、どこで、何のために使用したかを明記しましょう。
原稿は投稿先の規定を満たしているか?
投稿先の学術誌のガイドラインと助成機関の要件は、チェックリストの中で後回しにされがちな領域です。これらは純粋に規定を守れているかの問題です。判断の余地はなく、公開された具体的なルールがあるだけです。
- 投稿規定に厳密に準拠:構成、語数と図の数の上限、参考文献の書式、ファイル形式、学術誌のデータ・コードに関するポリシー。
- 学術誌の研究公正に関するポリシーを、流し読みせずに精読。画像調整のルール、AI利用に関する記載の文言、プレプリントの扱いは学術誌によって異なり、その違いは重要です。
- 助成機関の要件を充足。NIH(R01およびR21の助成)、ERC、Horizon Europe、Wellcome、Gates、HHMI、ISFは、オープンアクセス、データ管理、厳密性についてそれぞれ独自の要件を公表しています。学術誌の要件を満たした原稿でも、助成の条件には届かないことがあります。
- プレプリントの状況を申告。学術誌が求める場合は、要求される過去の投稿歴とあわせて申告します。
これらのルールは投稿先によって大きく異なるため、汎用的なチェックは、原稿の投稿先に合わせて設定したチェックと同じではありません。ここはチェックリストが習慣になる場面でもあります。この確認を日常的に行っている研究者や研究費の申請者は、修正のラウンドを形式面ではなく研究内容に費やせます。チェックリストのうち2つの項目については、個別の記事も参考になります。言語モデルが生成した参考文献の検証と、AI利用の正しい開示です。
Octymにできること
Octymは、このチェックリストを1つのレビューとして実行します。Octymのプラットフォーム上で、図、統計、参考文献、研究方法、開示事項を、すべての観点にわたって一度に確認します。問題の疑いがある箇所は、順位付けされたシグナルとして、それぞれの根拠とともに提示されます。根拠は原稿内や文献中の出典まで確認できるため、スクリーニング担当者が疑問を持ちそうな点を、担当者より先に把握できます。何に対応するかを決めるのはご自身です。ここで示されるものは判定ではありません。